#5 こるたなさんって誰ですか

『それで、こるたなってなんですか?』

本当にお茶を飲みながら――そこまで忠実に従わなくて良い気がするのだが、よほど不安なのだろう――彼女は私に尋ねた。

「音声サービスです。Siriみたいなもんですね」

『へぇー。じゃあ便利なやつなんですね』

「Siri結構使ってるんですか?」

『結構ってほどじゃないですけど、使ってますよ。暇なときとか。あと調べものしたいときとか』

私の周りで「Siriを実用している」という人は初である。

「なるほど。じゃあ先にいっときますね。CortanaはSiriと比べたら使い物になりません」

『え』

「まずできることが限られています。Siriにあるようないい感じの機能はなにもありません」

『えー…』

「調べ物はできますが、誰も使いたがらないエッジというソフトを使って、誰も使いたがらないビングというサービスを使って検索します。正直、使い物になりません」

ちょっと暴論であるが、およそ事実である。

このことの問題は複数ある。まず、Microsoft Edgeがよくないのは、Microsoft然とした使いにくいアプリケーションによるところが大きいのだが、性能的にもいまひとつである上に、機能実装も中途半端で「ちゃんと表示されないサイトが多い」ということによる。 使いにくいアプリケーションの最大の原因は、「タッチ操作のことしか考えていないUI」である。操作方法も操作感もタッチ前提になっていて、パソコン上では非常に使いにくい上に、意図したことができない、ということがあまりにも多い。 内部的な作りに関しては賛否が割れる程度にはできているので、昔のように中身だけEdgeを使ってアプリとしての機能は別に作る「架装ブラウザ」が流行りそうな気もするが、現状「だったらChromeでいいじゃん」となってしまう人が圧倒的に多いため、多分そのような日は訪れない。

Bingの問題は明白だ。 「検索結果で公式よりも先にウィルスを配布している広告を上に持ってくる」のだ。 以前はFirefoxやChromeなどを検索しても、公式ではなく、怪しげな非公式の配布元が上に並べられていた。 最近はだいぶ改善されてこれらのメジャーなソフトウェアに関しては怪しげな広告を排除したのだが、

Bingでbingを検索
Bingでbingを検索

bingを検索した場合ですら一番上にくるのは公式ではなくいわゆる「アフィブログ」というやつだし、

Bingでamazonを検索
Bingでamazonを検索

amazonを検索すると広告で公式が一番上に来るものの、検索結果の公式よりも上に「あたかも公式にみせかけた」アフィリエイトブログがヒットする。 もちろん、「あたかも公式のように見せかけて騙す」という行為が非常に怪しい行為であることは説明するまでもないだろう。

BingはMicrosoftが運営しているということもあり、Windows10の機能では常にBingを半強制的に使用させようとする。 これは特に初心者にとっては非常に危険な行為であり、Microsoftを信用するとしても、Microsoftが提供するweb連携機能はオフにしておかなければ危険…というのが現状なのだ。

『えー…じゃあなんでコルタナはあるんですか?』

「情報の抱え込み、ってわかります?」

『わかりません』

「個人情報っていうのは価値があるんです。どんな生活リズムで、いつどこへ行って、何を買って、どんな音楽を聞いて、誰と知り合いで、何を話したか、そういう情報はマーケティングをする上で非常に有益な情報であり、相当に価値があるんです」

『え』

「今の社会においてはこれを伏せておくことは事実上出来ません。iPhoneを使っていればアップルが、アンドロイド・スマートフォンを使っていればGoogleがかなりの情報を持っていきます。つまり、アップルはゆかさんのことを何でも知っているような状態だと言えますね」

『…怖いですね』

「そうです、怖いことです。それだけではありません。ポイントカードなんかも主な目的はそこにあります。SuicaやTポイントカードがそうした個人情報の扱いがいい加減であることで批判を浴びましたが、dポイントカードに至っては個人情報は好きなように使っていい、という契約になっています」

『dポイント使ってるんですけど…』

「私としてはお勧めはしませんね。そうした情報と引き換えにサービスを利用するか?ということを考えながら選択することは、現代人にとって不可欠なことになっています」

『怖いですね…』

「ちゃんと考えないといけませんね。その点、マイクロソフトは出遅れていたのですが、最近は積極的に抱え込む方針になったようで、マイクロソフトのサービスを使うよう、またマイクロソフトに情報を提供するように強く求めるようになりました」

『えー』

実のところ、別に明確な決断があって、情報提供する場合には構わないのだ。どのようなリストがありどのような価値があり、結果どうなるのか分かった上で利用するのは構わないと思う。 私はGoogleもMicrosoftも信用していないので、これらに渡す情報が可能な限り少なくなるようにしているが、Amazonに対しては買い物を集約していることもあって相当な情報を与えている。これはAmazonのことをある程度信用している、ということと、Amazonを信用することで得られる利便性を考えれば許容できるリスクだと思えるという理由だ。

「重要なのはむやみに恐れることではなくて、ちゃんと理解し、自分で考えて選ぶことです。例えば、最初に起動したときにライセンスに同意するかどうかという項目があったのですが、ライセンス読まれました?」

『わかんないです…』

「ということは恐らく読んでないのでしょう。このライセンスはそれほど問題のあるものではありませんが、利用方法によっては禁止されていることもありますから読んでおいたほうがいいかもしれませんが、同意しないとウィンドウズも使えませんし、まぁ同意しないという選択肢はないでしょう。」

最初にぶちあたる壁だろう。 もちろん、このことは流してしまうこともできる。というよりも、世の中だいたいの人は流していることだ。 だがこれは、「既に提供した情報をなかったことにすることはできない」という性質も加味すれば「気にしなくていい」と言ってしまうのはあまりにも無責任すぎる。それを言ってしまえるようでは、「詳しい人」の範疇にも入らないだろう。 ハードルを上げてしまうようだが、これが今のWindowsの現実である。 思えばWindows10になってから随分と難しい要素が増えてしまった。

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