#3 はじめてのマイパソコン

きっとこういうときは、逆光の社長室でタバコでも吸えばさながら映画のように映えるのだろうけれど、ここには光差し込む窓も、社長室もなければ私がタバコを吸うこともない。 あるのはモニターアームに固定されたトリプルディスプレイと、白い高級キーボード、使い込まれて塗装の剥げたマウスだ。 そんなことを言ったらよくある映画のように暗い部屋にモニターだけが赫耀と輝いているように思えるかもしれないが、そんなことはない。雑然としてはいるが、明るい照明の中で作業をしている。

ゆかさんからはXPSにしたいのでどれを選べばいいか教えて欲しいというメールをもらった。


決して、いきあたりばったりにパソコンを勧めたわけではない。 ちゃんと選び方がある。

もちろん、膨大の数のコンピュータを試し、把握しているからというのもある。 その上で、実際には元々ある程度「候補になりやすいもの」というのは限られている。 様々なモデルが存在はしているが、「出来の良いもの」「性能・機能に優れているもの」「コストパフォーマンスが良いもの」というのはある程度決まってくる。 どのような条件を与えても、それらは有力な候補になる。

もちろん、各メーカーはその改良に毎年力を注いでいる。ライバルと比べ劣っていると考えればライバルの優れているところを取り込もうともするし、 ライバルよりも少しでも優れているもの作ろうともする。 既に優れたものを作っていたメーカーにはアドバンテージがあるため、簡単には覆らず、「このメーカー」「このモデル」など良いものは次の年になっても良いモデルである可能性は高い。 だが、優劣はテコ入れによって劇的によくなって、あるいは間違った判断によって著しく悪くなって逆転することもまたあるのだ。

頭の中はどうなっていたのか。

最も基準になるのは携行性だ。 持ち歩くのか、どのような状況で持ち歩くのか、電源が確保できない時間にどの程度使うのか…

「カバンに入れて持ち運ぶ」ことを前提とするならば、13.3インチが基準になる。 使い勝手が損なわれない範囲でできるだけ小さい。小さい分、軽くもしやすい。 そのバランスの良さから様々なメーカーから「モバイルラップトップ」の主力モデルとして販売される主戦場となっている。

12.6インチになると物理的にキーボードのスペースが足りなくなってキーが小さくなる。そうすると打ちにくい、使いにくいなどの犠牲を払うことになる。 使いにくさをうけいれてでもより小さくしたい…という場合には12.6インチという選択肢が出てくる。 13.3インチの競争が激しいために、12インチは13インチよりもむしろ重かったりするから、そのメリットはひたすら「小さいこと」だ。

これよりさらに小さいとさらに犠牲は大きい。種類もなく、特殊用途になるから普通の選択では候補として提案することは考えにくい。

13.3インチは画面自体は少々小さい。多くの人が顔を近づけて見ることになる。少なくとも人に画面を近づけて見せたりするのには向いていない。 より見やすい画面、広い作業スペース、画面のシェアを考えるなら14インチが提案できる。

普通、13.3インチは須く「持ち歩くもの」という前提がある。しかし、14インチは本体を移動させはするものの、基本的には設置して使用することを考えているものが多い。リビングと自室、あるいは家と職場で持ち運びをするけれども、外で使うことはあまり想定していない。だから2キロ前後あるものが多い。2キロになると、明らかに荷物としては苦痛を感じる重量感がある。 しかし、ごく少数ではあるが、14インチでありながら接地面積は可能な限り小さく、そして軽くしたものもある。以前はもっとあったのだが、現在は2メーカー3機種…Lenovo ThinkPadシリーズの旗艦、X1 Carbonと、T400シリーズ(このときなら、T470sだ)、そしてPanasonic Let’s noteのLXだ。 特に、技術の粋を集めた高級モデルである「プレミアムモデル」と呼ばれるX1 Carbonは13.3インチ並のサイズと、1.1キロという13.3インチと比較しても軽量という驚異的なものだ。13インチの中でも携行性最重視のものを除けば抜きん出る印象が強い。

持ち運ぶ、と言われれば13インチをみせて、画面が小さく感じるか、打ちにくくてももっと小さくしたいか、それともこれがいいバランスか…ということを触りながら問えばいい。 持ち運ばないなら、15.6インチを試した上で、大きくて邪魔だと感じるようなら14インチ…と考えられる。

重量的には、わずか100グラムでも明確な違いとして感じられる。1.1キロから1.2キロあたりが標準的で、1.5キロに迫ってくると持ち運びが長引くと結構体に来る。1キロを切ると非常に軽く感じるし、800グラムを切るモデルに関しては重さを感じなさすぎて投げてしまいそうなほどだ。 また、重量配分も感覚的な重量や体への負担には影響があり、大きいのに均一な重量分布で軽いX1カーボンはとても軽く感じるし、逆にhp製のものはどれも重く感じる傾向がある。

こうして絞り込んでいくと、「持ち運びたい」という意思があれば、2017年秋の時点では次のような考え方に収束される。

ラヴィHZも、UH75/B1も、軽いけれどたわむし、キーボードは下敷きの上にアルミ箔を置いたような「打ち心地以前にこれはもはや “打つ” ではない」というものだった。UH75/B3は強固なボディと、ふわふわの打ち心地を提供するキーボードを採用して、今までの「軽さのためにいくつかを犠牲にしたもの」から「常識はずれのモンスター」に成長した。テコ入れで化けた典型例になった。

もっとたくさん判断基準はあるのだけれど、手法は似ている。そして、これらの候補と選び方は、「鉄板」なのだ。


XPSにすると決めたら、このマシンは選択肢が豊富にあるのでどれにするか決めなくてはいけない。

プレミアムモデルであるXPSには低性能なCeleronという選択肢がない。i3にはじまって、i5、i7というラインナップだ。 よほど使い方が限られているのでなければCeleronを勧めることは難しい。ゆかさんはMicrosoft Officeを使うと明言していたのだから、Celeronというのは厳しい選択だ。

実のところ…オフィスソフトのような「事務」というのはコンピュータに性能を求めないものの代表格に言われているものの、 実際にはMicrosoft Officeは決して軽いソフトではなく、あまり性能が低いとストレスになる。 それに、ウェブブラウジング――これを指して「インターネット」と呼ぶ人もいるが――に使うソフトも、最近は結構重いのだ。

このことから、i3でも若干のストレスという可能性があり、i5がお勧め、ということになる。 積極的に性能を要求するならi7もアリだけれど、i7が欲しい使い方というのはあまり無難な使い方ではない。ほとんどはもっと性能を追求できるデスクトップ型を買ったほうがいいような使い方になるし、値段差の割にはあまり体感できない可能性が高い。

メモリは、XPSは4ギガバイトから選択できる。 しかし、4ギガバイトというのは何をするにも不足する。メモリというのは、「余っていても仕方ないけれど、足りなくなったら駄目」なのだ。 たくさんの作業を並列処理するタイプでなければ8ギガバイトでやりくりできる。しかし、並列作業が得意でたくさんウィンドウを開いてしまうタイプだと自重しないと足りなくなる可能性がある。 16ギガバイトモデルはi7を搭載する最高級のもののみ。「8ギガで妥協する」というのが無難な選択肢だろう。

XPSの特徴として、より高密度で美しいQHD液晶を選ぶことができる…ただし、重くなる上にバッテリー持ちが大幅に犠牲になるので、実用上はなかなか勧められない。 タッチパネルも選べるし、タッチできると嬉しいときがあるのも事実だが、ネイルしている人は開閉するタイプであるクラムシェルラップトップでうまくタッチすることはしづらい可能性が高いので、犠牲になるものを考えれば「普通はいらない」。特にゆかさんの場合は、使い方にタッチできることで特別嬉しい要素が少なかった。

そうするとi5、8ギガバイト、FHD液晶タッチなしの「プレミアム」を勧めることになる。

もっと自由度が高い場合はもっと色々考えることになる。たとえば…ThinkPad13だ。 この場合は――

最近メモリは交換も追加もできないものが増えているけれども、ThinkPad13は「全体で2つ、交換も追加もできる」というものだ。 しかも、CRUという、購入者が追加したり交換したりしても保証無効にはならない部品になっている。 とりあえず8ギガバイトあれば足りるだろうし、1スロットにしておけば8ギガバイトモジュールを買って、裏蓋をあけて、差し込むことで16ギガバイトにパワーアップすることができる。知識が増えたときにさらにパワーアップできる余地があるということは、とても良いことだ。楽しいことでもある。


これくらいのことは、考えるのに5秒もいらない。2歳のときからコンピュータと戯れてきたのだし、こんな仕事をはじめてしまうくらいには研究熱心なのだ。 実際にはもっともっとたくさんのことを考え、判断した上で口にしている。 そのすべてを簡単に言うことなんてできない。なぜなら私はプロであり、プロでいられるほどに数多く積み重ねてきたのだから。

それはほんの数時間で得られるような知識ではない――そしてそんなことを願っているうちに手に入る知識でもない。 言ってしまえば、まして文字にしてしまえば、私が熟慮の上で見極めたものも、あるいは誰かが適当にお気に入りを挙げたものも、同じように聴こえてしまうかもしれない。

それでも、私は、「あなたのことを真剣に考えて、言葉にする」という以外の方法を、何も持っていない。


ゆか様、お問い合わせありがとうございます。 Mimir Yokohama 正木でございます。

MS Officeを使われるということですし、メモリは8GBは必要だと思います。また、多分Core i3だと非力に感じる場面があるかと思います。

XPS13は8GBにした時点でCore i3の選択肢はありませんし、16GBはCore i7しかなく、 16GBにCore i7というのは相当にバリバリ使うのでなければ価格に見合ったメリットがないと考えます。

バランスからいえばCore i5に8GBメモリのプレミアムが私のお勧めです。 プラチナにすればもっと様々な仕様が選べますが、ゆかさんに欠かせないものは特にないというのが私の意見です。

プレミアムは通常のシルバーとローズゴールドで2色から選択できますので、この2選択肢になるのではないでしょうか。

学生用クーポンを適用することと、OfficeソフトとしてMicrosoft Officeを選択することを忘れないでください。

保証についてはよく検討してください。私は “3年間 引き取り修理サービス” が良いかなと思います。 1年で陳腐化するような低グレードモデルではありませんし、かといって3年も使えばさすがに古くなってきたと感じるでしょう。 ですから、3年がお勧めです。 さらにアクシデンタルダメージサービスをつければ「落とした」というような場合も対象になります。

それ以外のオプションについては特に検討の必要はないと思います。

不明な点や、尋ねたいことがあればお気軽にご相談ください。 購入されましたら、ぜひご一報いただけますと幸いです。


お勧め通りにDell XPS13 プレミアム・ローズゴールドを購入した、というメールが私の元に届いたのは、その2日後の出来事だった。