#2 新米―ニュービー―に逸品を (前編)

少年A

そろそろだよね…

今風なワンルームマンション。そこで彼女は来訪を待っていた。 チャイムが鳴る。彼女はありきたりな受け答えをして招き入れた。

やぁ、はじめまして

クルージゴンクのジョンだ。

(子供!? っていうかジョンって!??)

あ、はい、よろしくお願いします

では早速環境調査を…

パソコンはそれだけ?

あ、はい

これだけです

彼女―トダミナ―は小さなパソコンデスクの上の銀色のパソコンを指した。 近頃では誰もが見慣れた林檎のマークが輝いている。

お姉さんは確か…IT職だよね?

はい…去年からの新人なんですけどね

なかなかレトロなものを使っているね…

Late 20081 かな

ミナのMacbookはひどく使い込まれた様子で、見るからに古く…実際に世代的にもかなり古いものだった。 これはなにを動かすにも色々支障があるのではないだろうか。

お父さんのお下がりで、大学のときから使ってるんです

ただ、ちょっとエンターキーがあんまり反応しなくて…

Oh...

バッテリーももたないし

あと職場がWindowsなんですよ

だからWidnowsにしろって言われてて

そんなストレスたまるものでよくやってるね

これはプライベート用?仕事でも使うの?

職場に持っていって使います

確か申込用紙にも目下のこととしてパソコンの買い替えを書いていたね

そうなんです

お父さんも友達もあんまり詳しくないから

じゃあ仕事でどんな感じで使っているのかきかせてもらおうかな

えっと、Javaでウェブのアプリ作ったりとか

ふむふむ、使ってるソフトは?

Visual Code Studioです

なるほどね

「プログラミング」などコンピュータを使うこと自体が仕事になるようなエンジニア職。

エンジニア職においてはものすごく高い性能を必要とするように思えますが必ずしもそうではありません。 環境にもよります。 もちろんあればあるだけ良いとは言えますが、実際には「必要」のラインを引く必要があります。

大きなポイントになるのが、「使うソフトウェア」「使う言語」「開発規模」などです。 個人でやっているのであればリソースとの折り合いをつければ良いのですが、会社の中である場合はかなり細かく決められていたりします。

制作に使用するソフトウェアとしてはEclipseがダントツに重く、NetBeansもかなりのものです。 一方、AtomやVisual Studio Codeなどで開発する場合はそれほど厳しい性能が要求されるわけではありません。

また言語も、JavaやCの場合「コンパイル時間」があるためコンピュータの性能が低い待ち時間が生じて生産性が低下します。一方、Ruby, PHP, JavaScriptといった言語はその点はあまり気になりません。

よくわからないから安いのでいい…?

でも仕事で使うパソコンなら会社で用意してくれればいいのにね

あはは…

まぁ、会社にもあるんですけどね

ただ、遅いし…ちょっと汚くって

まぁ、あるあるだね

まだあたしは全然使えないし、よくわからないから安いのでいいかなって思ってるんですけど

うん、それはおすすめできないな

えっ

そんなこともあろうかと思って持ってきたんだ

ジョンは小洒落たワンショルダーからパソコンを2台取り出した

え、2台も

重くないですか

訓練されてるからね、どうってことないよ

さぁ、こっちはLenovo V310だ。 うちの会社では訓練生が使っているものだよ

わぁ、すごいかるーい!!

まぁ、Macbook Early 2008って2kg以上あるしね

むしろよく持ち歩いてるよ

ボクならこの1.75kgのV310だってあまり持ち歩きたくないよ

で、こっちがWU22

ミナはジョンからパソコンを受け取った。だが、その瞬間ふわっと手が持ち上がってしまった。 危うく放り投げそうであった。

ふわっ、軽っ!!!

これは特別軽いやつだね

790gしかない

すごい…これならいつでもカバンにいれてて大丈夫そう

さて、環境がちょっと揃わないんだけど

VSCodeではさすがにわかりづらいからOfficeにしてみようか

Officeは使ったことあるよね?

はい、大学で超おせわになりました

じゃあ、これで触ってみてよ

このV310はCeleronプロセッサに4GBメモリー

まぁ、めいっぱい安い今のパソコンって感じだね

うーん…?

今開いてるのは割と重めのExcelシートだけれど、何かするとちょっと間があるよね

ピンとこないみたいだけど、Celeron 3855Uプロセッサは2008年モデルのMacBookが採用してるCore 2 T8100よりちょっっと上くらい、メモリは4GBでこれも2GBのMacBookよりは多い

2008年の高性能モデルと同じくらいだから、気持ち性能いい、くらいかな

あまり違いはわからないかもしれない

はい

大学で使ってたのもこんな感じだった気がします

今度は同じのをWU2で開いてみようか

はい

…ん?

んんんんん??????????

どうだい?

なんか…ぬるぬる?

画面の違いもあるかもしれないね

ただなにかしたらちゃんと反応するでしょ?

なるほどぉぉぉぉ…

なんか、今まで当たり前だったからなんとも思ってなかったんですけど、ほんとはこんなふうに動くものなんだってわかると今までのは嫌になりますね

ちょっと触っただけでも違いを感じるでしょ?

お姉さんはこれから買うパソコンと、人生で何時間過ごすことになるのかな…

(…ごくり)

あとね、なんとなく使いにくい、なんとなく気に入らない道具はなんとなく使う気にならなくて、なんとなく使わなくなるものなんだよ

仕事で使うなら、なんとなく仕事が嫌なものになるし、なんとなく憂鬱な時間になる

買う時の出費は痛いかもしれない

けど、必ず使うとわかっているものの出費をケチって人生の時間を引き換えるのはもったいないんじゃないかな?

うう…


  1. 2008年後期モデルのMacBook。 13インチのアルミ製で、重量は2.04kg。 Core 2 Duoプロセッサに2GBメモリ搭載。

  2. 富士通の13.3インチのモバイルノートPC。 790gと超軽量。 ジョンが使っているのはCore i7-8550Uに12GBメモリを搭載した高性能構成。