パソコンとデスクと椅子、ディスプレイの関係

「書くためのデスク」と「パソコンデスク」の違い

試しになにかデスクで書こうとしてみてください。 「書く姿勢」を作ったときと比べ、実際に書こうとすると体が傾く人が多いのではないでしょうか。

背筋を伸ばして、肘を90度より開いて書くほうが良いこととされ、幼い頃や書道ではそのように指導されたりもしますが、 実際これは手元が見づらい上に腕がブレやすく、書きにくいというか、書くのが難しい姿勢です。 このため、多くの人は書きやすいように紙に顔を近づけ、腕にのしかかるようにして筆記します。

このこともあって一般的にデスクの高さというのは高めになっています。 標準的なデスク高は72cmで、ダイニングテーブルでも72cmが一般的です。 座高の高い私の場合、これでもちょっと低いと思っています。筆記机としては、胸と腹の間くらいがちょうど良い高さでしょう。 低めの机によい姿勢で書く姿はかっこいいですが、日常の作業ではなかなか難しいものです。

対してパソコンデスクの場合、キーボードをタイピングする、というのが基本的な作業です。 筆記と異なり、手の位置はほとんどかわりません。また、なるべく腕はフリーであるほうが楽です。 腕はまっすぐにおろし、肘は90度より開くのが好ましい姿勢です。 ある程度腕を前方に伸ばしても構いませんが、まっすぐ腕を下ろす場合は机の天板はまっすぐおろした肘の高さより低くなくてはいけないということになります。

これは事務デスクと比べ随分低い高さです。多くの日本人ならば、62cmから65cm程度が好ましいということになります。 特に小柄で座高がより低い可能性の高い女性にとっては72cmという高さは、肩にも首にもしんどい高さである可能性が高いと言えます。

椅子とデスクの高さの合わせ方

例えばBauhutteのGT2001は座面高が420-510mm、ニトリのトニックは420-520mm、コクヨのピコラは390-480mm、ハーマンミラーのアーロンチェアはA型で360-480mm、B型で400-510mmです。

およそ10cm程度の調節幅があり、これによって「筆記机とパソコンデスクの好ましい高さの違い」を吸収することができます。筆記するときには下げ、キーボードを打つ時には上げればよいのです。

しかし、これでは集中できない環境が出来上がります。作業中、実は踵が浮いているとか、ついついキャスターに足を乗せてしまうなんて人はいませんか?

椅子の高さは足がべったりついて、ある程度踏ん張れる程に余裕がある必要があります。 つまり高すぎてはいけないのです。

しかし椅子の高さもまた、デスク同様にあまり自由度はありません。 可能であればデスクの高さを適切なものにしたいところですが、調整機能のあるデスクは少数です。

ニトリのプレフェ昇降脚は天板高を56cmから84cmまで変更することができます。 最適な高さを出すのが容易で、作業環境の構築に作業に有益です。

もっと良い製品もあります。BauhutteのBHD-1000M/1200Mは天板高を59cmから80cmに昇降できる昇降デスクです。Bauhutteのスタンディングデスクはより容易に(オフィスチェアのように)昇降できるモデルとなっているため、今後より簡単に「机のほうを合わせる」ことが可能なものになるかもしれません。

これらのデスクが使用できない場合はフットレストを使用するといいでしょう。 フットレストは足置き台です。これによって仮想的に座面を床に近づけます。 フットレストは様々な製品が出ていますが、「しっかり固定できて、適度な高さがあって踏ん張れる」ものであればなんでも良いです。できれば、自分の側にやや傾いているとより使いやすいでしょう。 私は上部が丸みを帯びた工具箱が(重量もあって動きにくいということもあって)非常に良いという知見を得ています。

椅子の選び方と使い方

椅子は座面高だけで決められるものではありません。 もちろん座面のクッションの快適性や耐久性も大事ですが、それ以外の要素もあります。

まず、背面です。背面に背中を預けることで、体重はお尻に集中せず分散し、お尻や腰の負担を軽減することができます。 体を包み込むバケットシートのようなゲーミングチェアが好まれるのは、こうした体圧分散性が高いためです。

このようなものは例えばAK Racing, DXRACER, Bauhutteなどの製品が人気です。 これらはプロゲーマーに向けた製品ですが、プロゲーマーは一日中ゲームに向き合うため、連続で長時間、姿勢も変えずに着座する傾向がありますから、このような状況においても体への負担の少ない製品となっています。

ニトリのデュオレハイエルゴクエストは背もたれが非常に高い追従性を持つ製品です。 しっかりと体重を支えてくれるため体もブレにくく快適です。

背もたれがよくても座面が広すぎると脚が曲がらなくなってしまうため前側に座らざるをえず、背中をつけることはできなくなってしまいます。 デュオレハイの座面奥行きは48cmですが、デュオレハイDXは51cmで、私だとデュオレハイDXでは座面に膝裏が当たってしまい窮屈です。1 アーロンチェアはA型が38cm、B型が43.2cm、C型が47cmです。

さすがにヘッドレストに頭をつけて作業するのはかなり難しいのですが、机に対して非常に深く座ることができれば可能で、首への負担が減ります。

深く座って背中を預けるならばロッキング機能と、ロッキング状態で作業できるロッキングの軽さあるいはロッキング状態で固定する機能、そして斜めに荷重がかかっても大丈夫な強度が欲しいところです。

より負担の少ない作業環境

さらに肘と手首が固定されているとより楽になります。 手首の固定に関してはリストレストを使うことで改善されますが、肘は難しい要素があります。 チェアの肘置きがちょうどよい位置2にくるのなら良いのですが、実際にはそれは困難です。さらに、どうしても肘置きを使用する場合はキーボードが遠くなりやすいという点も欠点で、角度まで可変のものでないとうまく支えられません。

デスクに取り付けるタイプの肘置きもありますが、デスクとの高さの関係がいまひとつ合わないということがよくあります。

そこでより良いのが、L字型やビーンズ型などの、机に対して体が入り込む形になる大きめのデスクを使用することです。 これによってデスク自体を肘置きとして使用することができるようになります。

さらに、このような良い姿勢も、首の向きが不自然に固定されては効果はほとんどなくなってしまいます。 高さと角度を理想的なものにするためにはディスプレイアームが欠かせません。 調整が簡単で、そのときの体調や一日の中での姿勢変更にも対応できるガススプリング式4軸タイプが良いでしょう。

ディスプレイアームを使うことで机が広くなり、キーボードを深くおけるメリットもありますし、このようなタイプのものならばその場で跳ね上げてスペースを確保することもできます。

簡単にできる方法は?

快適な作業環境を構築すれば作業効率はもちろん、実力向上にもつながりますが、なかなか構築は難しく、自由にならない部分もあります。

簡単にできて効果を発揮できるのはどんな方法でしょうか。

椅子の高さを調節する

キーボードを低めに置いて、肘に余裕が出るように椅子の高さを調節しましょう。

しっかり踏ん張れるように足置きを用意しましょう。

椅子を変更する

体に合っていて、しっかりと体重を支えてくれる椅子に変更しましょう。

自分にあっていて、ストレスのない椅子は、座りっぱなしとなるエンジニアやクリエイターにとっては最も重要な機材です。

リストレストを追加する

リストレストによって手首を浮かせて作業する必要がなくなり、負担が減少します。

ディスプレイアームを使用する

ディスプレイアームによって適切な高さ、角度にすることで負担が減ります。

アームレストを使用する

椅子が適切なアームレストを提供しないならば、デスクに取り付けるタイプのアームレストを使用するといいでしょう。


  1. エンジニアの中にはチェアの上で胡座や正座をしたいという人もいて、そういう人にとっては巨大な座面を持ったチェアが好ましいということになります。BauhutteのGT2000はそのような使い方にとても適しています。↩︎

  2. 背筋を伸ばして背もたれに預け、自然に肘を下げてキーボードに手を伸ばしたときに肘がある位置です↩︎

«